「新個人情報保護法」がPMSに及ぼす影響 ~PMSハンドブック読者!必読!~  第7回

 目次 ▲Back  第5章 個人情報保護委員会(第59条―第74条)  PDF    ▼Next

会員番号 0557 仲厚吉(個人情報保護監査研究会)

 

今月号では「第5章 個人情報保護委員会」を解説します。この章の内容はもともと番号利用法に規定されていたものですが、2015年9月9日の改正により、新個人情報保護法に移行され「特定」の文字が消えました。この章に限り、番号利用法制定時は黒字のままとし、新個人情報保護法に移行時に改定された内容を赤字で記載します。

第5章は、既に施行されています。ただし、例えば第59条は2016年9月現在第五十条として公表されており、この連載では、全面施行後の第59条としてご紹介しています。

また、2016年5月27日に「行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律」によって改正されました。2016年5月27日の改正については、緑字で記載します。
ただし、この緑字の部分は未施行です。


章 個人情報保護委員会     ※法の改正点は赤字で表記しています。

59条(設置)   (旧番号利用法:第三十六条、現在第五十条)

内閣府設置法第四十九条第三項の規定に基づいて、個人情報保護委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。
  • 個人情報保護委員会は、日本版プライバシー・コミッショナーと言われています。 「EU一般データ保護規則」 (GDPR:General Data Protection Regulation)では、EU全域で一つの欧州データ保護委員会(EDPB: European Data Protection Board)を置き、その傘下に各加盟国のデータ保護局(DPA: Data Protection Authority プライバシー・コミッショナー)を置き、各国を相互に連携させることにより、個人情報保護のワンストップショップを実現しています。事業者やデータ主体(data subject(本人))は、個人データに係る係争について、EU各国の複数の機関に個々に申し出する必要がないとされています。
  • プライバシーマーク制度では、プライバシーマーク付与機関(JIPDEC)が、制度に係る基準等を策定し、適正に運用する役割を担っており、事業者からの事故報告書の徴収や、本人などからの苦情等への対応措置を実施しています。ただし、対象がプライバシーマーク事業者に限定されています。

第60条(任務)   (旧番号利用法:第三十七条、現在第五十一条)

委員会は、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護するため、個人情報の適正な取扱いの確保を図ること(個人番号利用事務等実施者(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号。以下「番号利用法」という。)第12条に規定する個人番号利用事務等実施者をいう。)に対する指導及び助言その他の措置を講ずることを含む。)を任務とする。
  • 旧番号利用法においては、“国民生活にとっての個人番号その他の特定個人情報の有用性に配慮しつつ”と、個人番号利用事務実施者に対する指導及び助言等に限定していましたが、新個人情報保護法に移行したことに伴い、対象を広げています。
    赤字は追加された条文ですが、厳密な変更点については省略して表示しています。)

第61条(所掌事務)   (旧番号利用法:第三十八条、現在第五十二条) 

委員会は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。

  基本方針の策定及び推進に関すること。
  個人情報及び匿名加工情報の取扱いに関する監督、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第二条第一項に規定する行政機関における同条第九項に規定する行政機関非識別加工情報(同条第十項に規定する行政機関非識別加工情報ファイルを構成するものに限る。)の取扱いに関する監視、独立行政法人等における独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第二条第九項に規定する独立行政法人等非識別加工情報(同条第十項に規定する独立行政法人等非識別加工情報ファイルを構成するものに限る。)の取扱いに関する監督並びに個人情報及び匿名加工情報の取扱いに関する苦情の申出についての必要なあっせん及びその処理を行う事業者への協力に関すること(第四号に掲げるものを除く。)。
  認定個人情報保護団体に関すること。
  特定個人情報(番号利用法第二条第八項に規定する特定個人情報をいう。第63条第四項において同じ。)の取扱いに関する監視又は監督並びに苦情の申出についての必要なあっせん及びその処理を行う事業者への協力に関すること。
  特定個人情報保護評価(番号利用法第二十六条第一項 に規定する特定個人情報保護評価をいう。)に関すること。
  個人情報の保護及び適正かつ効果的な活用についての広報及び啓発に関すること。
  前各号に掲げる事務を行うために必要な調査及び研究に関すること 。
  所掌事務に係る国際協力に関すること。
  前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき委員会に属させられた事務
  • 赤字は、新個人情報保護法に移行したときに追加されました。
  • 緑字は、2016年5月27日に追加されました。2016年9月現在未施行です。
  • これにより、行政機関が保有する非識別加工情報は個人情報保護委員会の監視、独立行政法人等が保有する非識別加工情報は個人情報保護委員会の監督の対象となることが明確にされています。 
  • 行政機関非識別加工情報や独立行政法人等非識別加工情報は、匿名加工情報とは異なり、照合禁止義務から除外されます。行政機関等では本人を特定することが業務であり、非識別加工情報と作成の元となったデータを照合する必要があるためです。

第62条(職権行使の独立性)は、旧番号利用法第三十九条から改定されていないため省略します。

第63条(組織等)    (旧番号利用法:第四十条から移行、現在第五十四条)

委員会は、委員長及び委員八人をもって組織する。

2 委員のうち四人は、非常勤とする。
3 委員長及び委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
4 委員長及び委員には、個人情報の保護及び適正かつ効果的な活用に関する学識経験のある者、消費者の保護に関して十分な知識と経験を有する者、情報処理技術に関する学識経験のある者、特定個人情報が利用される行政分野に関する学識経験のある者、民間企業の実務に関して十分な知識と経験を有する者並びに連合組織(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十三条の三第一項の連合組織で同項の規定による届出をしたものをいう。)の推薦する者が含まれるものとする。
  • 旧番号利用法では、委員六人、うち三人は非常勤とされていました。
  • “特定個人情報が利用される行政分野に関する学識経験のある者”の部分は、旧番号利用法では、“社会保障制度又は税制に関する学識経験のある者”と記述されていましたが、より具体的に整理されました。

第64条(任期等)以降の第65条(身分保障)、第66条(罷免)、第67条(委員長)については、旧番号利用法(第四十一条~第四十四条)と変更はありませんので省略します。

第68条(会議)   (旧番号利用法:第四十五条から移行、現在第五十九条)

委員会の会議は、委員長が招集する。

2 委員会は、委員長及び四人以上の委員の出席がなければ、会議を開き 、議決をすることができない。
  以下省略
  • 委員の定数が八人になったことに伴い、四人以上の出席が必要となりました。

第69条(専門委員)   (新設、現在第六十条)

委員会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。

2 専門委員は、委員会の申出に基づいて内閣総理大臣が任命する。
3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。
4 専門委員は、非常勤とする。
  • 専門委員とは、事故や紛争など専門的な知識を必要とする訴訟において、審理の充実・迅速化を図るために、争点整理など手続きの早い段階から専門家の協力を得ることができるようにした制度です。2003年7月に、民事訴訟法第五章第二節に規定され、その任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則に定められています。

第70条(事務局)、第71条(政治運動等の禁止)、第72条(秘密保持義務)、第73条(給与) は、それぞれ、旧番号利用法の第四十六条~、第四十九条から移行されました。内容に改定はありませんので、省略します。

第74条(規則の制定)   (新設、現在第六十五条)

委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、個人情報保護委員会規則を制定することができる。

 

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SAAJ「PMSハンドブック」ご紹介サイト:http://www.saaj.or.jp/shibu/kojin.html 

認定NPO法人 日本システム監査人協会 個人情報保護監査研究会


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